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カテゴリ: 巻頭言

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巻頭言 

記事提供 共同通信社


「国のかたち」が変わろうとしている。2012年衆院選で自民、公明両党が政権を奪還し、民主党政権は3年余りで幕を下ろした。再登板した安倍晋三首相は、憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使に道を開いた。自衛隊の海外での活動が大幅に拡大し、安全保障政策は大きく転換することになる。憲法改正への取り組みも本格化させている。
 11年3月11日、東日本大震災が発生した。犠牲者は2万人を超え、今も仮設住宅などで不自由な暮らしを強いられている被災者が少なくない。東京電力福島第1原発の事故を受け、「脱原発」などエネルギー政策見直しの必要性が指摘されているが、一方で発電コスト軽減を理由に原発再稼働の動きが進んでいる。
 経済情勢も変化した。「デフレ脱却」の掛け声の下、大規模な金融緩和や規制緩和で株価は上昇し始めた。賃金、雇用環境も改善したと政権側は言うが、地方で暮らす人々に景気回復の実感は行きわたっていない。労働法制の改革による格差定着の懸念は残っている。
 首相が毎年交代する状態が続いたため、政治の安定が求められていたのは確かだ。長期政権であれば国際社会で日本の発言権が増し、他国との交渉が有利になる場合もある。外交に限らず、内政面でも強い指導力を背景にトップダウンで方針を決定しなくてはならない局面は存在する。
 しかし、戦後の日本の歩みが築いてきた国民生活に変革をもたらす政策決定であればあるほど、民意に耳を澄ます必要があるのではないか。国会審議はそのために存在している。与野党とも責任の重さを自覚しなくてはならないし、政治報道に携わるわれわれの使命はこれまで以上に大きくなっている。
 「政治ハンドブック」をほぼ4年ぶりに改訂した。政権交代に伴う政治情勢の変化や新たに生じた課題について加筆し、資料を充実させた。サイズを小型化し携帯性を向上させるとともに情報量を増やした。文字がやや小さくなり、ベテランの方々には読みづらいかもしれないが、ご容赦いただきたい。
 2020年、東京五輪・パラリンピックが開かれる。世界から集まる人々の目に日本の姿がどう映るか。社会のありようのかなりの部分を政治が方向付けていくだろう。それに対し有権者が審判を下す国政選挙もある。このハンドブックが、日々の政治や選挙報道の一助になれば幸いだ。

2015年5月 政治部長 鈴木博之